なまことかえるライブラリー【福津市津屋崎】静かな時間の流れを感じる不思議な本屋

本屋さん紹介の1本目は古賀市のお隣、福津市津屋崎にある「なまことかえるライブラリー」です。(以下、親しみを込めて店名を「なまこ」と書かせていただいてる部分もありますが、ご了承ください。)

っとその前に、なまことかえるライブラリーを訪れた経緯からお話ししたいと思います。

私が、「古賀市にみんなで古本屋をつくろう」プロジェクト(みんふるやプロジェクト:当サイトの運営団体)をやりたい!と発信したのは2019年夏のことです。仕事が夏休みに入るぞというワクワクがとまらない日に、勢いそのままに帰宅中の電車内で、興奮と緊張で震える手を懸命に押さえつけながらTwitterアカウントを開設しました。

自分が本屋として普通に開業するのではなく、みんなで協力して古本屋をつくりたい。そんなことを思いついたものの、どうしてよいのかわからず藁にもすがる思いでの発信でした。

それから数日間。ありがたいことに面白そうだと言ってくださる方々からぽつぽつとご連絡をいただきました。

そして、それら連絡の中の一つに、「隣町である福津市の津屋崎に『なまことかえるライブラリー』という素敵な本屋がある」との気になる情報があったのです。それが私となまこの出会い。ネットで情報を調べてすぐに行ってみようと決めました。

なまことかえるライブラリーへ

伺ったのは2019年の夏なので、写真が古くなってしまいましたが、そこはご容赦ください。それでは伺った時の話をどうぞ。


不思議な本屋だ。入ってすぐにそう思った。いや入る前から不思議だった。一見すると古い民家なので、まずどこから入っていいのか若干戸惑う。そして恐る恐る玄関を開けて入るも、人影がない。

その日、ネットの情報では営業日とあったし、門には小さな看板が出ていたし、多分大丈夫だろうと自分に言い聞かせて、店内へ。

門にはかわいい看板が出ている

(2020年3月現在は上記のような看板が出ているようです)



中は綺麗に改修された古民家。その端々のスペースに本棚がしつらえてある。

静かにたたずむ本棚

時は自分のためだけに流れているのだと錯覚するほどに、静か。

そんな折、窓の外に庭仕事をする女性の人影を見てはっとした。我に返り、来店しましたということで声をかけさせていただく。

素敵な本屋ですね、なんて他愛もない話から始まり、自分の思っている古本屋の構想まで親身になって話を聞いてもらった。

ご店主(なまこでは館長というそうだ)はご不在とのことだったので、ゆっくり本を見ていきますと伝え、しばし本棚を物色することに。

手作りの棚を組み合わせた本タワー

先ほど、不思議な本屋だ、と書いたが、なまこは仕組みも不思議なところがある。

もちろん、本屋なので本が買える。新刊、古本両方ある。ここまではまあ普通なのだが、実はなまこでは本を借りることもできるのだ。本を売らなきゃ、という焦りのようなものがほとんど感じられず、店全体に不思議でゆったりとした雰囲気が漂う所以は、ここにあるのではないかと思う。

そもそも「かえるライブラリー」とは、どうも「買えるライブラリー」ということらしい。ライブラリーはもちろん図書館なので、本が買えるし、借りれもしますよってこと。ネーミングもいい。

ただ、置いてある本をなんでもかんでも借りられるのかというとそうではなく、貸出専用の本と、販売用の本とに区分けがなされている。そのへんは少しだけややこしかったりもするが、詳しくはお店で聞いてみてほしい。

貸出用と購入用の本に区分けされている



本を物色していると館長さんが戻られたので、詳しい話をまた聞かせていただいた。

そして、話を聞けば聞くほど、面白い、珍しい本屋だという考えに拍車がかかった。

例えば

会員になって自分の蔵書をなまこに置く

その本を読みたいという別の会員さんが借りていく

本の感想をノートに書いて想いを共有する

というような仕組みを作っていたりする。

館長さんは、

本で商売をするというよりも、本を通して人が集まってきて、この場所をつかってもらうことのほうが大事なんです

とおっしゃっていた。

自分がみんふるやを立ち上げたきっかけは、使われなくなってしまった建物や部屋に、街の人の不要になった本を集めて詰め込んだら、それだけで本のある場所、みんなの集まれる場所が無理なくできるんじゃないか、という着想から。館長さんの言葉にはとても共感できるところがあった。

しかし、言うは易し、とはよく言ったもので、実際にみんふるやを始めてみて、やろうとしていることの難しさを感じている今、2年もの時間をかけてなまことかえるライブラリーをつくりあげた地元有志の方々のご尽力には本当に頭が上がらない。

館長さんは

本業の不動産業で、この場所を所有しているがために、本の売上をそこまで重要視しない運用が可能なんです

とも。

最近、個人で本屋を開業する人たちは、このように副業でされている方が多いという話も聞く。本の売上だけで食べていくのはそれだけ難しいということだ。とにもかくにも、本屋が少なくなったこの世の中で、本業であれ副業であれ本屋というものを実現させている方々の努力には並々ならぬものがあると感じる。そして、そのどちらにもそれぞれのよさがある。

自分たちのプロジェクトに目を向けると、現在、古本屋を実現させるための場所がないという状況。さて、どうやって古本屋を実現させるのか。難しいことだけど、楽しみながら乗り越えていきたい。

古賀市と福津市は目と鼻の先で兄弟のようなものだ。もしも私が、みんふるやを始める前になまことかえるライブラリーを知っていたら、もしかしたら、みんなで古本屋をつくろうなんてことは思わなかったかもしれない。なんせ素敵すぎる。そして近い。

何も知らなかったからこそ発信できた。無知とは時に武器にもなるのだ。そんなことを思った夏の日だった。


なまことかえるライブラリー
福岡県福津市津屋崎1丁目27−32
営業日:木、金、土
営業時間:10:00〜17:00